DLA(外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLA)のススメ その3 「DLA<話す>」編
DLA記事のその3、今回は「DLA<話す>」について書きます。
前回に引き続き、この記事は
・DLAを使ってみたい
と思っている方におススメです。
DLAその1、その2の記事はこちら↓
1、DLA<話す>とは
<目的>
絵カード「基礎タスク」「対話タスク」「認知タスク」を使い、
子どもの話す力を3面でとらえる。
- 基礎タスク→基本的な文型や語彙を使って応答できる
- 対話タスク→1対1のやりとりで与えられたタスクを実行できる(ロールプレイ)
- 認知タスク→自分の意見や考えをまとめて述べられる
<対象>
日本語で最低限の受け答えができるレベルから。
「はじめの一歩」で受け答えが成立しなかった子どもには実施が難しい。
<方法>
絵カードを用いて、対話を進めていく。
絵カードの内容、実践ガイド等、詳細は↓の「第3章 話す」「資料:話す(カード)」の各PDFファイルをご参照ください。
外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLA:文部科学省
<注意点>
- 子どもの発話を遮ったり、否定、訂正したりしない。
- 子どもが質問を理解していない場合は文言を変えずに3度ほど繰り返す。
- 褒めて終わる。
<絵カードについて>
基礎タスク3枚、対話タスク4枚、認知タスク7枚 計14枚
<基礎タスク、対話タスク>
全学年に行える。
順番通りに使用する。
<認知タスク>
子どもの年齢(認知レベル)に合わせて3,4枚使用。(低学年は2枚)
絵カードと対象年齢はマニュアル参照。
無理強いはしてはいけないので、基礎タスクまで、対話タスクまでなど、途中で終了してもよい。
<診断>
「量的評価」と「質的評価」で評価を行い、
それを「JSL評価参照枠」に照らしてステージ(1~6)を判定する。
量的評価→「正答」「無回答」の2択
質的評価→評価が高い方から5~1点。「文の質」「文法的正確度」等。
2、「DLA<話す>」をやってみて
<わたしの失敗~実践ガイドの通りに!>
マニュアル全体はもちろん、実践ガイドもちゃんと読み込めていなかったわたし…(-_-;)
子どもが答えられないと、つい子どもがわかりそうなことばに言い換えたりしてしまっていました。
でも、DLAを最大限に生かすために考え、作られている実践ガイド
実践ガイドの通りにやる!文言を変えたりしない!
当たり前ですが、これがとても重要です。
<「暗黙の約束事」の話>
基礎タスクの1枚目は「教室」の絵カードです。
教室の絵を見ながら、
「ここはどこですか」「先生はいますか」といった質問をしていくのですが、
最後に「時計はありますか」「今何時だと思いますか」という質問があります。
もちろん、「実際に今いる教室」ではなく、「絵カードに描かれている教室」について話していくわけですが、
最後の質問にだけ、絵の中の時計ではなく、現実の時刻を答えようとする子どもに会ったことがあります。
以前、
算数の文章題が苦手な子どもは注意を向けるべき対象が定まっていないことがある
という話を聞いたことがあります。
例えば、「りんごを10個もらいました。5個食べました。残りはいくつでしょう?」という問題では、
注意を向けるべき対象は「手元に残ったりんごの数」ですが、
「いつ5個食べたのかな」「誰と食べたのかな」などと考えてしまう…
ちょっと、この話を思い出しました。
注意を向けるべき対象を突然変えてしまう子どもにはこの「暗黙の約束事」の明示が必要な時があると思った事例でした。
<日本語ができなくても…>
認知タスクは絵について、まとまりのある話をするタスクです。
低中学年用の「お話」カードは「赤ずきん」「3匹のこぶた」「うさぎとかめ」の絵が描かれていて、
その話を知っている場合はあらすじを再生するというタスクです。
このタスクで、「うさぎとかめ」を4コマ漫画風にさらさらとイラストにした子がいました。
日本語では「うさぎと…」ぐらいしか出てこなかったのですが、
そのイラストが物語の流れを的確にとらえていて、認知力の高さがうかがえました。
日本語ではできなかったけれど、
得意な絵というストラテジーを使って、的確に説明できる能力がある!
DLAが日本語力だけでなく、「認知力」を見る、
ということを実感しました。
次回は「DLA<読む>」です。