DLA(外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLA)のススメ その2 「語彙チェック」編
前回に引き続き、テーマはDLA。
「はじめの一歩 語彙チェック」について書きます。
この記事は
・DLAを使ってみたいけれど、全ては難しそう
・マニュアルをすべて読んでいる暇はないけど、とりあえず語彙チェックを使ってみたい
と思っている方におススメです。
DLAの概要について書いた前回の記事はこちら↓
1、はじめの一歩 導入会話、語彙チェックとは
<概要>
「はじめの一歩」はDLA前のウォームアップで、
「導入会話」と「語彙チェック」からなります。
- 導入会話→挨拶、名前など子ども本人に関するQA
- 語彙チェック→絵で示された55問の基礎語彙を答える
<目的>
- 子どもの生活環境や言語環境をよりよく知る。
- DLAをどのように進めるかの参考情報を得る。
- 対話を通して子どもとの信頼関係を築き、DLAに前向きに取り組める雰囲気を作る。
<対象>
全ての子ども、特に日本語力の予測がつかない子ども。
日常から語彙力、会話力を把握できている場合は省略可。
<所要時間>
5分程度。テンポよく!
2、語彙力チェック
<方法>
子どもに威圧感を与えない座り方(×正面に向き合う 〇机の角を挟んで斜めに)で、55枚の絵カードを子どもに見せて「これは何ですか(名詞の場合)」「何をします/していますか(動詞)」「どんな〇〇ですか(形容詞)」と質問し(質問の文言は実践ガイドの通りに)、答えを引き出す。
できれば、母語でもやってみる。
詳細は↓の「第2章 はじめの一歩(概要・実践ガイド・診断)」をご参照ください。
外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLA:文部科学省
<注意点>
- 間違い、答えられない場合も訂正したり、教えたりしない。テンポよく!
- 録音をしておいて、子どもの前で採点しない。
- 子どもの発話に相槌や頷きで反応する。子どもを励まし、答えを引き出す。
- 褒めて終わる。
<取り上げられている語彙>
名詞42、動詞8、形容詞5の55
13の領域(例:体の部分、食べ物、職業、学校生活の動作、感情など)から複数の語彙を、その中でいくつかは全体と局部を対(例:「目」と「まつげ」)で出題している。
<診断>
出来が70~80%なら次に進む。
20~30%以下なら、この段階でDLAは止める。
ちなみに、日本語母語話者の1年生で90%程度が一つの目安だと研修で聞きました。
日本生まれでぺらぺら話しているように見えても、90%に達しない子どもは多くいました。
3、語彙力チェックをやってみて
<わたしの疑問>
マニュアル全体をきちんと読み込まず(-_-;)実践ガイドを頼りにやってみたわたしは
- なぜ、普段あまり使わないであろう語彙が入っている?
- なぜ、訂正をしない?
と疑問に感じました。
日本語教師の方なら、この疑問に共感していただけるのではないかと思います。
ですが、これは
この55の語彙の1つ1つを知っているかどうかが問題ではない
ということです。
「目的」にもありますが、「子どもの言語環境」言い換えれば、
日本語との接触量が十分かどうか
どこでどのぐらい日本語に触れ、それを理解しているか
を推測する材料だということです。
また、
「全体(目)はOKだけど、部分(まつげ)は知らない」
「なじみのない職業名(消防士)はわからない」
といった傾向をつかむことが重要です。
<「引き出し」の話>
何回かやってみて、子どもたちが共通して間違える、答えられない語彙の1つがこれでした。
実は小学校にあるのは「棚」や「机の中」で「引き出し」がないんですよね。
つまり、家庭内では日本語に触れていない(これは問題ではないです!)ということ。
ならば、指導をする際にそういう語彙は注意が必要だということです。
こんなこともありました。↓
生活言語はOKの小3。
— まゆゆな (@mayuyunajapanes) 2019年11月11日
「冷蔵庫」が出てきたので、「どこにある?」と聞いたら「『台所』の後ろ」と。
絵を描いて、確認していくと
「台所」=「流し台」と理解していたことが判明。
こういう家庭内の言葉は訂正してもらえる機会がなかなかない。#外国につながる子ども
<母語でもやってみる>
日本語のあと、母語でもやってみようとぜひ声をかけてください。
母語を採点できる人がいなくても、です。
もちろん、しっかり採点できる人がいるのがベストですが、
どの程度答えられるか、明らかに知らない語彙は何か、がわかるだけでも参考になります。
また、拒否されるケースも結構ありました。
単に早く終わりたい、面倒で拒否というケースもありますが、
人前で母語を使うことやルーツのある国について語ることに対する思い、態度をうかがい知ることができます。
ここに書いたことは、マニュアルをちゃんと読み込めば、ほぼ書いてあります。
ですので、ぜひマニュアルを読み込んでみてください。
とはいえ、実際読み込むには時間もかかるし、やってみないとわからないことも多々あると思います。
これを読んで、まずはやってみてくださればうれしいです。