子どもの日本語(JSL)教材の蔵

日本語教師による「かゆい所に手が届く」を目指したJSL教材紹介ブログ。個人的見解の備忘録でもあります。

絵本を使った国語(物語文)の予習

今回は 絵本を使った国語の予習を紹介します。

この記事は

  • 早い段階から教科学習につながる日本語指導をしたい
  • 日本語が十分でなくても学級での授業に積極的に参加できるようにしたい

とお考えの方にお勧めです。

 

1、教科学習につながる日本語指導

子どもの日本語指導は教科学習と切り離せない

成人と子どもの日本語指導で大きく違うのは、

子どもは日本語を学び、その日本語を使って学力を伸ばしていく必要がある

という点です。

子どもの日本語指導は学校での教科学習と切り離すことはできません。

 

ですが、

来日直後には集中的に日本語の初期指導を受け、その後も必要十分な支援を受けながら教科の授業を受けている

という子どもはそう多くないのが現状です。

 

わたしの現場でも日本語教室は週に1回、母語支援員がつくのも最大でも週に3回程度です。

 

日本語・母語の支援がない時間の方が長いのです。

その時間、子どもは理解が十分でない日本語でクラス授業を受けることになります。

マンツーマンであれば日常会話ができる子どもでも、1対多人数のクラスで、日常生活では使わない語彙が出てくる授業を理解するのは簡単ではないでしょう。

 

算数や理科なら、教科書や先生の話す日本語がわからなくても、計算方法など学習内容について知っていれば、ある程度理解や推測ができます。

「知識」が「言語の不足」を補ってくれるわけです。

 

ですが、国語はそうはいきません。

それで、日本語教室で国語の「知識」を増やしておけば、クラス授業にも参加しやすくなるのではないか?と考えました。

 教科書より絵が多い絵本を使うことで、

  • 理解を助ける
  • 本に親しむ

 ことにつながります。

2、絵本を使った国語の予習

2-1物語文の読み取りに必要なこと

国語の授業では音読や漢字、物語から発展して何かを書く作業などもありますが、

今回は物語の読解(内容理解)について考えたいと思います。

物語の内容理解には、

  1.  登場人物(だれ?→どんな?)、設定(どこ?いつ?) がわかる
  2.  時系列で 何が起きた?/誰が何をした? がわかる
  3.  どんな気持ち?/なぜ、そうした?/それが起きた? がわかる

ことが必要です。

 

 

2-2実践例 2年「お手紙」

実際に2年生の子どもとやってみた活動をご紹介します。

<対象の子ども>

 来日1年の2年生

 生活言語はある程度できるが、語彙の不足があり、国語の理解は難しい。

 ひらがな読み書きは一通りOK

 

<方法>

(導入)

絵本と教科書を見せて、「お手紙」を学級で勉強することを話し、

「クラスのみんなより先に読んでみる?」

「(絵本と教科書)同じお話だけど、どっち読む?」

「自分で読む?先生が読もうか?」と聞く。

(この「みんなより先に」がやる気スイッチになる子どもが多いです(^^))

子どもの希望で絵本の読み聞かせに。

 

(①読み聞かせ)

普通に読み聞かせを行う。

途中、子どもが絵を指して何か言ったり、質問してきた場合は答える。

 

(②絵を読む) 

絵を指して質問しながら、内容を確認していく。

「これは誰?今どこ?何をしている?」

「どんな気持ち?」(難しければ「嬉しい?悲しい?」と選択式の質問に)

「どうして?」など。

 

(③理解した内容が本文にどう書かれているか探す)

②の質問で「がまくん」と正答が返ってきたら、本文の中から「がまくん」ということばを探す。

子どもから「いやな」など、本文(この場合は「悲しい」「ふしあわせな」)と違うことばが返ってきた場合はヒント(例:まず「気持ち」ということばを探して、その前後を見るように促すなど)を出して、「悲しい」「ふしあわせな」という語を子ども自身が見つけられるようにする。

子どもの日本語レベルややる気によって、

「登場人物等の設定」だけ、

「時系列に出来事を追う」まで、

「登場人物の気持ちや因果関係」まで 

など難易度を調節する。

 

(④発展 イラスト並べ替え→作文)

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これを並べ替えて、紙に貼り、その下に

「誰が何をしている」(余裕があれば、気持ちなども)を書く。

↓こんな感じです。

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ですが、実はわたしは④まではなかなかできません。

時間切れだったり、書くのは嫌がられたり…で、うまくいかないことも多々あります(^^;

 

他には「おおきなかぶ」「スイミー」「スーホの白い馬」なども同様にやってみたことあります。

「おおきなかぶ」は大きさを体感できる↓を使いました。楽しいですよ!

Big Book おおきなかぶ | 青幻舎 SEIGENSHA Art Publishing, Inc.

 

高学年の説明文「鳥獣戯画」でも↓を使いました。

全ページ読める|新・おはなし名画シリーズ(23) 対訳 鳥獣戯画|絵本ナビ : 辻 惟雄,西村 和子 みんなの声・通販

テーマが難しそうで嫌がっていたのが、「ああ、昔のマンガみたいなものか?!」と少しは興味がわいたようです。

 

 今回ご紹介したような国語の予習(復習にも)役立ちそうな教材を見つけました。

(この記事を書くに当たって、「かすたねっと」で検索して見つけました)

岩倉市日本語適応指導教室

↑の「すぐに使える教材集」です。

実践の蓄積を惜しみなく公開してくださっている、素晴らしいHPです。

活用しないのは損ですね。

 

絵本は物語の理解を助けてくれるだけでなく、いろいろな対話も生まれます。

ぜひ、使ってみてください。