DLA(外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLA)のススメ その5 「DLA<書く>」編
DLA記事のその5、今回は「DLA<書く>」です。
この記事は
・DLAを使ってみたいと思っている
・作文指導(特に動機付け)に興味がある
方におススメです。
1、DLA<書く>とは
<目的>
まとまった文を書く力を測る。
それは大きく以下の2つに分けられる。
- 考える力→文字化する前に課題について考える
- 文字にする力→文字・文法の習得
<対象>
- 文字習得が進み、文を書くことの指導が始まっている児童生徒
- 話したことを文字化できる児童生徒
文字が書けない子どもは対象外
<方法>
- 課題を与える(選ぶ) →低・中学年は口頭で、高学年以上はプリントで提示
- 書く前の作業(用紙を選ぶ、テーマについての対話)
- 書く
- 対話を通して振り返る
自ら進んで書く場合→取り組む姿勢の観察、質問への対応
なかなか書けない場合→対話を行い、励まし、誘導する。
詳細は↓ 「第5章書く」の各ファイルをご確認ください。
外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLA:文部科学省
2、「DLA<書く>」をやってみて
<書く意欲を引き出すちょっとした方法>
「作文大好き!」な子どもはあまりいません。
第二言語である日本語で書くことを求められる外国ルーツの子どもはなおさらです。
そこで、書く意欲を引き出すことが指導側の課題になります。
「DLA<書く>」では、その一助として「用紙を選ぶ」ことができます。
絵日記のように絵を描くスペースがあったり、イラストが添えられていたり、
マスの数が少ないものなど数種類あります。
それを選ぶことで、がぜんやる気になる子どもがいました。
同様に、いつもの鉛筆ではなく、サインペンやお気に入りの色鉛筆などを使うことがモチベーションupにつながったこともありました。
DLA<書く>の課題の中に「大切なもの」があります。
対話をして引き出そうとしても「うーん、別にない」などと言われてしまい、
どうしよう…と思っていた時に、
たまたま筆箱が目につき、「その中にお気に入りある?」と聞いたら、
マーブル状に色が出る珍しい色鉛筆が出てきました。
「学校の勉強には関係ないもの」で、持って来てはいけないものでしたが、
本人も学校では絶対に使わないけれど、お気に入りだから入れてあるとのことでした。
そこで、その色鉛筆を使って、その色鉛筆について書いてみるかと提案すると、
喜んで取り組みました。
<書く目的>
わたしたちが書くときは何か目的があります。
例えば、このブログであれば、
読み手:外国ルーツの子どもの日本語・教科学習指導(支援)に関心のある人
目的:教材について知ってもらう/備忘録
です。
これがないのに、「書け」と言われると、やっぱりモチベーションは上がりません。
以前、こんなことがありました。↓
来日直後、日本語ゼロの小1児童。
— まゆゆな (@mayuyunajapanes) 2019年10月29日
学級担任から「みんなと遊べるように、ドッジボールのルールを教えてあげて」とリクエスト。
わたしの知らないローカルルールがあるかも?と、生活言語はできる他の子どもに事情を話すと、嬉々として教えてくれた。#外国につながる子ども
産休に入った前年度の担当指導員から手紙をもらった子どもが積極的に返事を書こうとしたケースもありました。
「書く目的」と「読み手」の明確化が動機づけには重要です。
<話しことばと書きことば>
作文は
- 書くべき内容を考える
- 内容を正確な文にする
- 文を文字化する
このステップを自力で全てこなすのはなかなか難しいものです。
そこで、DLAでは支援として対話をするように実践ガイドに書かれています。
それに従って、わたしも子どもに質問をよくします。
先ほどの色鉛筆の例なら
「それは何ですか」→「色鉛筆」
「どんな色鉛筆ですか」→「いろんな色が…ぐちゃぐちゃってなってて、きれい」
「どんな色が混じっていますか」→「赤とか黄色とか…」
こうすると上記ステップ1はクリアできます。
ですが、2になると
「いろんな色がぐちゃぐちゃってなってて、きれい」「赤とか黄色とか…」を
語順や助詞を整え、話しことばを書きことばにして
「赤や黄色などのいろいろな色が混ざっていて、きれいです」とする必要があります。
これを「教える」のではなく、「子どもから引き出す」というのがわたしの課題です。
DLAの記事はひとまずこれで終わりです。
「聞く」は実施した回数が少ないので、もう少し経験を積んでから書きたいと思います。